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大阪で発生したノロウイルス集団食中毒 給食パンが関与か 過去の浜松事例から考える防止策

今回の事例は、過去の大規模食中毒と構造的に共通点がある可能性があります。

3月、大阪府内でノロウイルスによる集団食中毒が発生し、学校給食で提供されたパンが関与している可能性が報じられています。詳細な原因や工程上の問題については、今後、保健所による事実認定や調査結果の公表が待たれる状況です。

ノロウイルスによる食中毒は毎年のように発生していますが、今回のように「給食」「パン」という組み合わせは、過去の大規模事例を思い起こさせます。

2014年の浜松市でも、学校給食の食パンが関与した大規模事例が発生

実際、2014年には静岡県浜松市で、学校給食の食パンが関与したノロウイルス集団食中毒が発生し、1,000人を超える患者が確認されました。

この事例は厚生労働省の審議会でも取り上げられ、原因分析と再発防止策が検討された、非常に重要な事例として知られています。

浜松の事例では、加熱前の原材料よりも、焼成後の工程における人を介した汚染が大きな問題として整理されました。パンは焼いたあと、そのまま提供されることが多いため、提供直前の工程でウイルスが付着した場合、再加熱によってリスクを下げることができません。そこが大きな弱点になります。

今回の大阪の件も、最終工程での汚染リスクに注意が必要

今回の大阪の件も、現時点で詳細な原因は公表待ちですが、「給食パンが関与している」という点では、過去の浜松事例と共通する構造がある可能性があります。

もちろん、今回も同じ原因だと断定することはできません。ただ、少なくとも「最終工程での取扱い」や「人を介した二次汚染」という視点は、今回も重要になると考えられます。

ノロウイルス食中毒は、食品そのものより「人を介した二次汚染」が問題になることも

ノロウイルスによる食中毒は、食品そのものよりも、調理従事者や取扱者を介した二次汚染によって広がるケースが少なくありません。

ノロウイルスは非常に少ないウイルス量でも感染が成立するとされ、感染者の便や嘔吐物中には大量のウイルスが排出されます。また、不顕性感染、つまり症状がはっきり出ない状態でもウイルスを排出していることがあるため、本人が「大したことはない」と判断して作業に入ってしまうリスクがあります。

厚労省の総括から見える、防止策のポイント

浜松事例の総括で特に重要なのは、設備の不備だけではなく、人の行動や運用管理の問題が大きく指摘されている点です。

報告では、手洗い環境の不十分さ、手袋交換ルールの曖昧さ、作業着の管理、トイレ動線の問題などが挙げられていました。つまり、単に「食品が悪かった」という話ではなく、「人がどう扱ったか」が大きな要因だったということです。

ここから引き出せる防止策は、今も十分に通用します。

浜松事例の総括から、特に重要とされるポイントは以下の通りです。

・少しでも下痢や嘔吐、腹部不快感など消化器症状がある場合は、調理や配膳に従事しない
・出勤前の体調確認を、形式だけで終わらせない
・手洗いの実効性を見直す
・手袋の交換ルールを明確にする
・パンのような非加熱で提供される食品は、特に慎重に扱う
・配膳、検品、盛付、運搬など、加熱後の工程を最重要管理工程として考える

今回の大阪の件をどう考えるか

今回の大阪の件について、もし浜松事例の総括にある防止策が全て守られていれば発生を防げたのか、と問われると、現時点ではそれは分かりません。原因がまだ確定していない以上、断定は避けるべきです。

ただし、厚生労働省で総括された浜松事例から学べる防止策を、改めて今の現場で確認することには十分な意味があります。

流行期は、衛生管理の範囲を広げる視点も重要

流行期には、通常時よりも衛生管理の範囲を広げることも重要です。

手洗いだけでなく、トイレ個室内の便座、洗浄レバー、ドアノブ、トイレまでの導線部分、共用部の手すり、配膳台、共有テーブルなど、接触頻度の高い箇所を重点的に清拭する必要があります。

ノロウイルスは環境中でも一定期間残存し、接触を介して拡大する可能性があるためです。

ノロウイルスの流行期には、設備だけでなく、「人」と「環境」の両面から見直す視点が欠かせません。今回の大阪の件は、今後の詳細な発表を待つ段階ではありますが、過去の浜松事例とあわせて考えることで、現場で何を注意すべきかを改めて確認するきっかけになるはずです。

参考資料

・厚生労働省「浜松市内で発生した大規模食中毒事例について」(2014年2月4日)
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000036646.pdf

・国立感染症研究所「浜松市内におけるノロウイルス集団食中毒事例」(IASR Vol.35、2014年7月)
https://id-info.jihs.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/4798-dj4131.html

・厚生労働省 食中毒対策・ノロウイルスに関する情報
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431.html

・国立感染症研究所 ノロウイルス感染症に関する情報
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/360-norovirus-intro.html