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ウエルシュ菌は土壌にも。厨房に土を持ち込まない

2026年10月、静岡県掛川市の子ども食堂で、カレーライスを食べた144人のうち31人が腹痛や下痢などの症状を訴え、患者の便からウエルシュ菌が検出されました。

提供されたカレーには、当日調理したものと前日から用意していたものがあったと報じられています。患者はいずれも快方に向かっています。

› 掛川市のウエルシュ菌食中毒についてはこちら

そもそもウエルシュ菌とは

ウエルシュ菌は、人や動物の腸管内だけでなく、土壌など自然環境にも広く存在する細菌です。

特徴のひとつが、熱に強い「芽胞」をつくること。通常の加熱調理でも芽胞が生き残ることがあり、酸素の少ない環境では増殖しやすくなります。

ウエルシュ菌の特徴を4項目で示した図解

大鍋で作るカレーやシチュー、スープ、煮物などで注意が必要とされるのは、この「熱に強い」「酸素が少ない環境で増えやすい」という性質が関係しています。

土が付いた野菜、どこで洗っていますか?

今回の掛川市の食中毒について、土付き野菜が原因だったと発表されているわけではありません。

ただ、ウエルシュ菌が土壌にも存在する菌であることを考えると、厨房での「土の扱い」は改めて確認しておきたいポイントです。

ねぎの根元、じゃがいも、にんじん、ごぼうなど、土が残った状態で入荷する野菜があります。

こうした食材は、調理や盛り付けを行う清潔な区域まで土を持ち込むのではなく、下処理場所で土を洗い落としてから調理側へ移すことが基本です。

土付き野菜を下処理場所で洗浄してから清潔な調理区域へ移す流れ

土はウエルシュ菌だけの問題でもありません。農林水産省は、土壌中にはセレウス菌、ウエルシュ菌、ボツリヌス菌など、病原性を持つ細菌が生息している可能性があるとしています。

行政の資料ではどう示されている?

農林水産省

ウエルシュ菌は、 土壌などの自然環境中にも広く存在 するとしています。

厚生労働省「大量調理施設衛生管理マニュアル」

HACCPの概念に基づき、 下処理は汚染作業区域で確実に行い、非汚染作業区域を汚染しない よう示されています。

区域分けが難しい中小規模の調理施設では

厚生労働省は具体例として、 「野菜に付いている土を洗い落としたもの」を購入する など、調理室内を汚染する危険性の高い作業を減らす方法も示しています。

農林水産省「家庭では」

家庭向けの資料では、野菜をよく洗うことに加えて、 「土付き野菜は、土が他の食材に付かないように」 と案内しています。

つまり、「土付き野菜を使ってはいけない」という話ではありません。

調理施設では、土が付いた食材を下処理側で扱い、清潔な調理区域へ土を持ち込まない。家庭では、土をほかの食材へ広げないようにしながら、野菜をよく洗う。それぞれの環境に合わせた扱いが大切です。

大鍋料理は、加熱した後にも注意

ウエルシュ菌のやっかいなところは、加熱すればそれで終わりではないことです。

熱に強い芽胞が残った状態で、カレーやスープなどを大鍋のままゆっくり冷ますと、鍋の中がウエルシュ菌の増えやすい環境になることがあります。

保存する場合は、小分けにするなどして速やかに冷却し、低温で保存することが重要です。

厚生労働省のHACCP手引書では、ウエルシュ菌は酸素のあるところでは生きにくいため、 加熱する際はよくかき混ぜ、空気に触れさせることも予防のポイント とされています。

温め直す場合も、提供直前によくかき混ぜながら、全体を十分に加熱します。

家庭でも、秋から冬の煮込み料理に注意

ここまでは主に調理施設での衛生管理を見てきましたが、家庭でも注意するポイントは同じです。

土付き野菜は、土がほかの食材に付かないようにしてよく洗う。洗った後はシンク周りも清潔にしてから、次の調理に移ります。

そして、涼しくなってくると、カレーやシチュー、煮込み料理を「もう暑くないから」と鍋のまま置いてしまうこともあります。

秋から冬にかけても、作り置きや煮込み料理の常温放置には注意しましょう。